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同時代 刊行に際して


 時代の真剣な期待の眼は、わけても若い世代の上に注がれてゐる。過去と現在に対するぼくたちの不満は大きく、そしてぼくたちの内部には衝迫と希求とが燃えてゐる。ぼくたちを満足せしめ得るものが何であるか、ぼくたちは固より正確には知らない。知ってゐるのはただ、ぼくたちの生命がこの渇仰の中にこそあるといふことだ。

 然しながら、一切は実現に、-即ち作品に懸ってゐる。ぼくたち六人は、この遥かな目的に向ふ努力の場所として、ここに「同時代」を刊行した。ぼくたちは外部よりの寄稿を仰がず、また局外より何らの制約を受けず、各自が夫々の個性を自由に生かすことを求める。自由に、-だが自由にとはまた、ぼくたちが夫々に負ってゐる重荷を誠実に擔ひ行くの謂にほかならず、またこのことが、時代を共にするものに相通ふ重荷として、「同時代」を支へるのである。

 随って、この集成の内容に関しては、ぼくたちは何らの制限を用意してゐない。固定された名の下に一つの運動を標榜するのはぼくたちの採らぬところである。のみならず、文学の既存の諸形態は今日既に崩壊を促されてゐはしないだらうか。号を重ねるとともにその含むところが愈々多様に分化してゆくことを、ぼくたちは期待さへしてゐる。蓋し、ぼくたちが自らに、また相互に加える鞭は、ぼくたち各自に恐らくは異なった途を指し示すであらうし、況んやこの混沌の時代にあって、ぼくたちが前途に望み見るものは、調和ある田圃の美観ではなく、茫々たる荒野の豊饒なのであるから。

 

   宇佐見 英治

   岡本 謙次郎

   小島 信夫

   白崎 秀雄

   原 亨吉

   矢内原 伊作


同時代: テキスト

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