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ロダン「ダナイード」
美の美
なんとも美しい彫像である。ほれぼれとして去りがい。だがうっかり近づくとはねつけられる。
ロダンにこういう言葉があるーー
「肉付けを行うときは、決して表面によってではなしに起伏によって考えねばならぬ」。見る方も、起伏に従って見なければならない。クゼルが回想記でおもしろい挿話を残しているーー。夜、ロダンはランプに火をつけ、メディチのヴィーナスの古代の複製のかたわらに行き、その腹部を焔で照す。すると、グゼルが思いもかけなかった無数の微細な凸凹がうき上る。それからロダンはヴィーナスを支えている移動盤をまわす。その回転につれて、微細な起伏が比類のない複雑さで展開する……。
この彫像にも、それだけの起伏がかくされている。それが、表面のかたちとは別の次元でぼくたちの心に、あるリズムとなってひびいてくるまでは、近づくのは待たねばなるまい。 ぼくたちの思想は、こんなところで、思いがけず訓練されるにちがいない。
(美術評論家・明大助教授)
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