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運慶「大日如来像」(円成寺)
美の美
現存する運慶の作品は少ないが、これは最初の作。 安元二年(一一七六年) 運慶造像の銘がある。鎌倉時代という希有の動乱期を生きぬき、彫刻界に大きなエネルギーをふきこんだ、この巨匠がまだ若年のころの作。運魔という名は伝説的な名になってしまい、伝記は分らぬが、たぶん、この像をつくったときは、三十歳に達していまいと思われる。作品の面にそって目が動くにつれ、作者の作っているときの若々しい感情が躍如としているのがつたわってくる。あふれるばかりに流動する、しかも、緊張した線には青年期特有の情熱が感じられる。
藤原期の影響をまだ脱却していないとは通院だが、むしろ、その影響を悪びれず受けいれ、影響をはらい落そうなどとしていない。つまり、まだ作者にとって恐るべきもの、恥ずべきものが何もないのである。青年の特権として、何ものをもおそれぬ確信の季節から生ずる聡明とすがすがしさがある。この後二十数年間、作品の現存しないことは、ぼくには何か暗示的に思われる。
(明大助教授・美術評論家)
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