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東大寺「伎楽面」
美の美
ユーモアというものははかりがたいほど強い世的な力である。そして、おそらく、はかりがたいほど力強いユーモアをもつ作品のみが立派な作品にちがいない。どんな悲劇的な作品でも、大作家はそのうちにユーモアをただよわす術をこころえている。が、現代では、ユーモアはやせ細って不健康なくすぐりになり、末梢神経ばかりを刺激する卑小なものになってしまった。
天平のこの豪壮でグロテスクでユーモラスな夜楽面――こんな仮面をかぶってどんな踊りをしたのかは知らぬ。が、こんな大きなヤツをかぶっては、速い動きは不可能だろう。が、青丹(あおに)よしといわれた色彩豊かな都で、巨大な大仏殿を背景として踊るとすれば、ほとんど所作(しょさ)はいるまい。ぬっとあらわれてきて、野放図にゆうゆうと動いていれば、それだけで十分迫力が出てくるにちがいない。それに、これは多分、白昼の光の中での踊りだったということが、ぼくの心をひく。誰の参加をもまぬ白昼の公開でこそ、ユーモアは大きくなる。
(美術評論家・明大助教授)
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