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古代エジプト 蛇王の碑

美の美

 エジプト第一王朝期、「蛇王」の碑といわれる浮彫りである。宮殿の正面をあらわしたらしい建物と蛇、すなわちゼット王とをかこむ長方形を台としてこの俊敏、悠揚たる神鷹ホルスがまたがっている。第一王朝は紀元前三千年余り、エジプトが歴史時代に入ったばかりのころで、この作品は研石として最古の作例だろうが、この期のみならず、百代エジプト全期を通じての逸品だろう。精悍なつら魂で、堂々とふんまえた鷹は神品といえようか。
 デルタを発見したというエジプト人が幾何学的に抽象化し、様式化した忍なすがたは簡潔で迫力がある。張りのある量感にはあふれんばかりの溌剌たる生の充実感がみなぎっている。その充実感がこちらにむかってつき出してくる。見るものは、その力に呼応して、眼をまるで触覚のように働かせ、彫られた面を力をこめておしかえす。たがいにおし、おされる関係に、緊張した格闘的なたわむれがはじまる。このたわむれの場が、つまり造型空間の原型なのだ。
(明大助教授・美術評論家)

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