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ロダン「カレーの市民」(3)

美の美

 カレーの市民」の群像の動きは、中央の首長からはじまるが、つぎつぎと外見上の身ぶりは大きくなる。正面から見て、首長の左側にあたる人物――この行進の最後の人物――の手の動きもすばらしい。
敗戦の悲しみ。みずから身に荒ナワをつけ、完全な無抵抗のまま、征服者のもとにおもむく苦しさ。 この行進の終わったところには死が待ちかまえている。身に残っているわずかな力の、最後の努力は、死にむかって歩むということである。
 それぞれの人物の手は、造型上でもみごとな対照を示し、アクセントにもなっている。
 中央の首長は、両手を力なくたれ、自然の状態のままにまかせている。 前に紹介したカギをもつ人物の両手は虚勢といっては違うが、ある意味で「つくられた」力をこめて、カギを握っている。それに対して、最後の人物の両手は心の動きをあらわして、大きく動いている。 前に進まねばならず、しかも、進みたくない、この全体の動きの中で、この左右の手が、最後のしめくくりをつけ、もう一度、この動勢を首長という起点にもどす重要な役割を果している。
(美術評論家・明大教授)

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