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ロダン「カレーの市民」(2)

美の美

 「カレーの市民」の群像は、いうまでもなく、孤軍奮闘、ついに力つきたカレー市民の代表者たちが、征服者たるイギリス王のもとにおもむくすがたである。
 中心をなすのは、いまにも倒れそうでようやく立ち上がり、一歩一歩歩いていく老齢の首長である。 すべては、この人物のすがたにささえられている。群像はたがいにささえあっているとはいうものの、中心はあくまで、この人体である。物語のうえでも、造型上でも、そうである。しかも、この中心は、中央の奥にひきこんで、めだたぬ動きを示している。英雄とはそうしたものかもしれぬ。
 その首長の向かって右にいる人物が、外見上もっとも堂々と立ち、毅然としているが、首長にくらべて、心が弱いために、逆に外見上、毅然たる姿勢をとらねばならぬ、といった、生理的あるいは心理的な状況まで、よくあらわされている。
 ひき渡さねばならぬカレー市のカギをもつ手の表情はすばらしい。この人物の心の動きとそれにともなう身体の動きとが、ことに集中的に表現されている。
(明大教授・美術評論家)

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