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ロダン「カレーの市民」(1)

美の美

 上野の西洋美術館にある「カレーの市民」は、いま東京名所のひとつみたいになっている。実際、これはロダンのモニュマン彫刻の最高傑作であろう。
 ロダンについては、もうずいぶんいわれているが、生涯かけてつくりつづけた「地獄の門」が結局は未完成におわり、失敗作だったこと、そして、その間に「カレーの市民」などを残したことは、ロダンという大彫刻家を知るうえで、一つの大きな手がかりになるはずだ。簡単にいえば、自分の一生のうちではどうにも処理できぬ、さまざまな問題ととりくみ、悪戦苦闘しつづけて未完成のまま生涯をとじたからこそ、一方ではこうした傑作を残す「芸術上の判断」を下すことができた、ともいえよう。
 この群像は、造型的にも、表現上でも、物語の説明としても、すぐれている。
 すぐ気のつくことは、中心にある老齢の首長が、人体として、もっとも動きが小さく、一見弱々しいことだ。生身の人間としての弱さを虚勢をはらず、そのまま出しながら内心の葛藤にたえている。そして、それゆえに、その弱さを克服した人間の強さを示す。「倒れぬのりっぱなのではない。倒れてのち立ち上がるのが英雄だ」ということば通り、これは真の英雄のすがたであろう。
(美術評論家・明大教授)

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