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レンブラント「自画像」(部分)

美の美

 これは晩年の自画像である。「富よりも名声を」といった若いころの野心は、「名声よりも自由を」望む境地に速する。
 この場合の「自由」とは、画家として真実を追求する自由のことであろう。 オランダという、当時もデモクラテイックな市民国家で、市民に要求される肖像(しょうぞう)画によって名声の絶頂期にあったころからレムブラントの心には、画家としての自由―というより人間としての真実を求める自由―を求める情熱がおきていた。
 富と名声から、貧困と無名の地にみずから身をおくことになる。ユダヤ人区の一隅にひっそりとかくれ住んで、聖書と自己の精神とを、厳格に見つめることになる。
 若いころの外見上の光と陰の照応は、ここでは、精神の深みを表現することになった。 青年期のきらびやかな姿の中に暗示されていた倦怠感(けんたいかん) はまったくなくなり、自由を得た精神がきびしくあらわれる。色というものがほとんどないこの作品は、「対象において最大のリアリスト、光において最大のアイデアリスト」ということばが、厳密な意味であてはまる。
(明大教授・美術評論家)

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