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レンブラント「サウルとダビデ」

美の美


 この作品は、先にあげた晩年の自画像とほぼ同年の作と思われる。このころのレンブラントにとって、自画像を描くことと宗教的主題をかくこととは、ほとんど同じことだったようだ。
 自画像のうちには、自己の内部におこるさまざまなドラマが秘められている。それは激烈な悲劇でありながら―いや、それだからこそ、外見上は静かなきびしさをもってあらわれる。一方、宗教画では、この悲劇は対象と光の持つ力によって外見的にもあらわれる。
 聖書によると、 ゴリアテを破ったのち王宮にむかえられたダビデは、若き英雄として、やがてサウル王以上にほめたたえられるにいたる。ある日、ハーブをかなでているダビデにサウルは突然ヤリを投げつける。この物語のドラマはいろいろに伝えられ、絵にもかかれているが、レンブラントは物語の説明ではなく、その背後に秘められたシチュエーションを示している。 ダビデは外部の何ものにも気づかずに、ひたすらハーブをひく高貴な若者である。ザウルは王としての尊厳をも忘れ、カーテンで涙をぬぐう。色を持たぬレンブラントは、それにかわる光を持っていて、人間の神の不思議を表現している。
(明大教授・美術評論家)

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