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ルドン「月桂冠」

美の美

 蝶の羽根が花びらの花粉のように、柔かな、沃(と) えた賦彩が、あやしいまでに見るものをとらえる。深いが、同時に、ほのぼのとした純度の高い色が、明快な構想と緊密な形とにささえられ、静かにかたりかけてくる。
 オディロン・ルドン(一八四〇―一九一六年)は静かに秩序だった生活をしていたという。グループに加わらず、他人と争うこともなかったらしい。 孤独に宗教音楽にしたしんだが、たしかに、その絵には楽で養われたような感覚がある。視覚よりも、むしろ、聴覚でとらえた、あえかな韻律にちかい。はかなく、口惜しい、束の間のいのちの美しさ定着する。
スピノザの哲学、シェクスピアの作品、ヴェダア、インド仏教などに傾倒したが、静寂な瞑想でとらえた神秘感がある。生まれたばかりでまださだかならぬ感情と明確にめざめた意思の決定との結合とでもいおうか?
 詩や物語に取材した絵も多く、これも、そうした主題があるのかもしれぬが、ぼくは知らない。
(明大助教授・美術評論家)

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