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ヤン・ヴェルメール「アトリエの画家」

美の美

 ヤン・ヴェルメールは十七世紀オランダ風俗画家の中できわめて独特な存在である。「風俗」ではなく、静けさそのものを描いているような感じを受ける。沈黙と秩序の画家ともいわれるが、たしか彼の作品は、ある不思議な秩序によって構成され、あるべきものがそのところに置かれ、しかも、何ものも動かない。人物すら微動もしない、静物画家の「静物」だって、もっと動きの感じがあるし、日常の時の経過や流れを感じさせるものだが、ヴェルメールの作品では、時がとまってしまったかのようだ。
 といって、発展とか進展がないというのではない。いわぼ、ここだけが、あるエーテルのような一の別の空気につつまれていて、他の騒音や動きとは関係なく生きているといったぐあいなのだ。周囲でどんな騒ぎがあろうと、それはこの世界にはいってゆかない。この効果を生む大きな原因の一つは、たしかに光の処置にちがいない。が、もよりも何よりも、作者のもつ独特な芸術観、あるいは人生感、世界観であろう。
(美術評論家)

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