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ミケランジェロ「聖母子」(フィレンツェ・メディチ礼拝堂)

美の美

 ミケランジェロには、一種狂気にちかいものがある、といわれるが、それは、彼がー彼ほどの天才をもちながら、あるいは、もっと正確にいえば、天才であるがゆえにーその天分だけでは、どうにもならぬ、到達不可能な理想をもっていたからだといえよう。
 ミケランジェロ自身は、自分の才能を祝福されたものか呪(のろ)われたものか、その両極を振幅して、ときには混迷し、周囲の人々に、天才のおそろしさを感じさせた、といわれる。
 なぜ、そこまで自分の才能について考えねばならなかったか?おそらく、個人の努力をもってしては到達できぬ理想をいだき、それに一歩でも近づこうとしたからだ。 自分の才能について疑いをもちながら、自分の理想については疑いをもちえなかったからだ。
 「聖母子像」の幸福は「ピエタ」の悲劇と対称をなすべきものだろうが……。
 この作品も完成寸前まで行きながら、最後のところで未完におわっている。ミケランジェロが自分自身に対して課した厳格さがうかがえる。「聖母子」の幸福と「ピエタ」の悲劇とは、彼には同じものだったにちがいない。
(明大教授・美術評論家)

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