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ミケランジェロ「ピエタ」(ローマ)

美の美

 「ピエタ」とは、十字架からおろされてキリストが聖母マリアに抱かれている像をいうが、ミケランジェロは、一生を通じて、これをいくつも制作している。
 この矛盾にみちた、最も崇高な、劇的な主題は、ミケランジェロの性格にもっともかなうものかもしれない。……そして、そのほとんどが未完成である。未完成ということは、この場合、重要な意味を持つが、それは別に書くとして、ローマのサン・ピエトロ寺にあるこの「ピエタ」は、彼の最も初期の作で、例外的に完成されている。
 その美しさで、一般的な人気があるが、しかし、ときには、あまりにも優美な仕上がりのために、そして、後年の傑作に比べ、彫刻として不完全とも見られる。それはそれで一応うなずけるにしても、ぼくには、その不完全に、青年のういういしさが感じられる。
 大理石を自由にあつかえる技量を縦横にふるうたのしさと、主題の悲劇に対する青年らしい解釈とが、うまく結びついて、若々しさがあふれている。青年期の特徴であろう。成熟するにつれて、こううまくはいかなくなる。
(明大教授・美術評論家)

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