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ベルメール「楽器のそばに立つ女」
美の美
ベルメール(一六三二ー七五)の作品については前に別のものを紹介したが、これはロンドンのナショナル・ギャラリーにあるもの。彼はレオナルド・ダビンチ以後セザンヌ、ルノワールの晩年にいたる数世紀間に、稀有(けう)の「絵画としての色彩」をもつ画家である。
絵画としての色彩というとむずかしくなるが、要するにルノワールのいう「色彩は天分による」という意味に解釈してもらえばいい。色のハバは非常に狭いが、その範囲に限定することによって無限の諧調をもち、説明や描写でなく、表現としての色彩になっているということだ。
女は楽器をひいているわけではない。モチーフの一環として立っているだけ。日常の目にしうる動きもない。動きといえば、窓からはいって、結局は女の衣装におちつく光だが、それもかえって場景を凍結している、といっても奇妙なことではあるまい。
たとえば、セザンヌは静物画を人間と同じ態度でかいた。人間も静物も画家にとっては同じくりっぱなモデルだという発見が、近代絵画の一つの革命になったとすれば、この革命をへてベルメールは再発見されたのだ。そして、それと不可分に結びついた、たび重なる色彩の革命をへて彼が超一流の大画家とみなされるようになったのは、ごく最近である。
(美術評論家)
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