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ヘンリ・ムア「待避壕」
美の美
彫刻家ムアは素描家としても有名である。 これは大戦中の待避壕(ごう)の中。人間が無機物になりそうで、まだ人間である状況といえようか?
ムアは有機的生命的ということばをよくつかう。たとえば、石にじかぼりする場合、石そのものに生命を見ているということである。 有無機の分け方はいまではつかわれぬものらしいが、ここでいう有機とは、部分は全体に規制されると同時に、部分は全体を成するというような関係の成立した状態といってよかろう。
これは逆にいえば、人間が、ある場合には無機物になりうるということでもあろう。 こんな関係は相関的なものだから。
待避壕の中は、一種の極限状況だが、そんなとき、人間が壁になる、というような小ばなしがあった。たしかに無機物になりたいという欲望もおこるものだ。が、同時に、どうしても人間でありたいという欲求もあおこる。この張りあった状況をムアはよくつかまえている。
(明大教授・美術評論家)
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