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ヘンリ・ムア「内と外の形態」

美の美

現代文明の危機感は、人間の手におえぬ事物そのものの生命をあらためて見ようとする。この点、現代芸術はプリミティブ芸術のアニミズムとよく似る。
いままで受動的な状態で、埋もれ、沈み、休み、眠っていた他の存在者を、あえてゆうごかし、それを存在者たらしめること、そうしたとき、はじめて人間は存在者たり得るのだろうか?
残酷なことだが、そうしないかぎり、現代では、人間と世界とが結びつかのかもしれない。ムアの彫刻の確かさの中に、底知れぬような不安、あるいは危機感のあるのも、そのためだろう。不安があればこそ、自己の流暢(りゅう
ちょう)さと和解しないのだ。
むろん、ムアは不安や危機感をあらわそうなどとはしていない。志向しているのは、あくまでも生への積極的な肯定である。人間と世界とを、ふたたび、堅固に結びつけようとする意思だといってもいい。
そこがまた、現代芸術のフォルムとプリミティブなアニミズムとの重大な相違であろう。
(明大教授・美術評論家)

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