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ブレーク「ダンテ『神曲』挿絵」(第三一歌)
美の美
ブレークの好きな人でも、この絵はめずらしいものであろう。
ブレークは最晩年、ダンテの「神曲」に水彩でさし絵を百枚あまりつくっている。というより、つくろうとした。完成されたのは七枚、あとは完成寸前のものから、鉛筆でちょっと下がきしたものまであり、制作過程がよくわかる。現在、このさし絵はイギリスとアメリカとオーストラリアとに三分されているが、ここにのせたのはメルボルン美術館の作品。
「神曲」の地獄界、第三1歌。 巨人アンタイオスがパージルとダンテとを奈落の底につれ、かるがるとおろしたところ。この地獄の底には大魔王とユダが封じこめられているという。
この辺の幻想は、僕には非常にわかりにくいものだが、たしかに、こんなふうに読みとるべきものか、と感じいる。
ダンテは巨人を雲のかかる斜塔とも見、船のほばしらにもたとえている。動いている雲や海から見れば、斜塔やほばしらの方がゆらいで見えるはずである。その感じが、流動する宇宙的な力とでもいうべきものに象徴されている。
(美術評論家・明大教授)
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