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ブレーク「ダンテ『神曲』挿絵」(第一四歌)

美の美

 この作品も、先日紹介したものと同様、メルボルン美術館所蔵の一つ。
 地獄界第一四歌。地獄を経めぐって、ダンテはヴァージルにたずねるーー
 「師よ、かの大いなるものはたれぞ。見るからに火をものともせず、傲然 (ごうぜん)とゆがみくねりてふしたれば、雨もなおかのものをやわらげずと思わるる」
 テーベを攻めた七王の一人で倨傲(きょごう)のために、ゼウスの雷電にうたれて死んだカパネオスである。ダンテとヴァージルとは左側に立ち憐憫(れんびん)の情をこめてみつめている。炎の中に身をやき、いかずちにうたれているすがたは、倨傲のイメージであろう。
 ヴァージルは、力をこめていうーー。
 「おお、カバネオス、汝(なんじ)の倨傲の滅びざるかぎり、なお汝呵責(かしゃく)をうくべし。汝みずからの狂妄のほか、汝の怒りに当たるべき苦しみはあらざらん」
 ブレークはときどき敬虔(けいけん)なのか倨傲なのかわからなくなるが、たぶん、その両極端がブレーク自身のうちに存在しているのだろう。そのためにこうした作品が異様な迫力をもってくる。
(美術評論家・明大教授)

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