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ブレイク「ヨブ記挿絵」
美の美
人を如何なる者として・・・時わかず、これを試みたまふや。(ヨブ記七・17ー18)
ブレイク(一七五七ー一八二八年)は詩人、画家、そして預言者などといわれるが、二十世紀になってから、はじめて正当に認められたといっていい。ジイドがブレイクとドストエフスキー、ニーチェ、ブラウニングを同一星座の星だといったが、たしかに、この四人に共通した問題は、近代の指導原理たる合理主義的な進歩の概念をこえている。ルネサンス以後の近世ヨーロッパへの再検討という現代の一大動向の中で、ようやく理解されるにいたった。
ブレイクの絵は、あるときは幼児のように無邪気でたのしげで、軽快な温かい心でやさしくほほえみ、見るものを幸福にさそう。あるときは一種異様な、ものすごい形態と晦渋(かいじゅう)な陰影をもって、重々しくのしかかる。猛烈なクリスト教徒で、晩年「ヨブ記」に挿絵をかいているが、この作品はその一つ。この重々しいヴォリュームとそれを支える空間とは、近世絵画とは全く質のちがった方法でとらえられている。ともかくと、この挿絵は、古来聖書につけられた註のうち、もっとも立派なものの一つである。
(明大助教授・美術評論家)
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