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ピカソ「婦人像」

美の美

 この「婦人像」は一九三七年十二月四日の制作である。
 激動する世界の中で、ピカソ自身がその心中に――というより、この場合、その全身をふるわせて――激動をおぼえ、次から次へと激しい作品を制作していたことが明らかにされたが、そうした激情の合間に、ふと思いがけず見いだした、ある清澄なものである。言語撞着(どうちゃく)するようだが、本格的に悲劇的な、それゆえに幸福な清澄である。絵の向こう側、はるか遠くまでつ通るような青を紙上では紹介できないのが残念である。
 前にもいったことだが、ピカソは感性だけを唯一のらしん盤として生涯を通している画家だとぼくは思うが、その感性が、いったん、激しい困難な時代に遭遇すると、無類の確かさで、正しい方向を示す(時代がゆるむと、このらしん盤は、かならずしも正確ではない)。
 知性とか感性とかいう分類をこえて、精神の高みにまで作品をひきあげ、見るものをも、その幸福な饗宴に参加させるのは、こうしたときだ。
(明大教授・美術評論家)

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