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ピエロ・デラ・フランチェスカ「コンスタンティヌスの戦い」
美の美
ピエロ・デラ・フランチェスカは十五世紀中ごろ、イタリア初期ルネサンスとよばれる時期に活躍した画家である。この作品はフィレンツェの南アレッツォにある壁画の一部。
ローマの最初のキリスト教皇帝コンスタンティヌスが軍隊の先頭に立ち、異教徒の敵に対して、小さな白い十字架をかざしている。この新しい信仰の象徴の力があまり強いので、敵は戦わずして逃げ去るという図。つまり、この絵の主題は普通の戦争ではなく、一種の奇跡である。ピエロは兵士たちにコンスタンティヌス時代の衣装や武器をもたせていないが、これはこれで一つの意義があるのだろう。
ピエロは透視図法的遠近法を科学的にも追究したが、そうした形態の確かさと明快さとが、この厳粛な性格を強調している。
初期ルネサンスの混乱した、エネルギーに満ちた時代に、自己の確かさを得ようとした一つの典型である。この作品の中の、きびきびした清朗な空気は、単にいわゆる色遠近法によるものではなく、作者の精神の清澄と不可分に結びついたものにちがいない。
(美術評論家・明大教授)
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