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パウル・クレー「Gの風景」

美の美

 童画―あるいは子供のおとぎばなし―みたいな作品だが、子供に描ける絵はない。
 この絵に、哲学的な冥想(めいそう)から生まれた非常に重要な思想を感じる、といったら、いぶかしく思われるかもしれない。あるいは、笑われるかもしれない。が、ちょっと待っていただきたい。
 人生のむずかしい問題を、それと気づかずに、散歩しながら、たのしく遊びながら、いつの間にか教わっていた、というときがあるものだ。 そして、いつか、それに気づいたとき、人は生きる喜びの意義を知る……そんなふうに、たのしい作品なのだ。
 クレーは一九二七年の夏、コルシカに旅行して、この作品を描いた。地中海的な明るい秩序と北欧的な暗い祈りとが、まじりあっているようでもある。
 「現実は夢と同じ質料でできている」ということばがあるが、この、たのしい、透きとおった、夢のような作品は、決して夢と同じ質料でできているのではない。心のキンセンにだけふれて、高雅な音を出す、何か、ある特殊な光線が、最も具体的なものを、このようなかたちに表わしたにちがいのない。
(美術評論家・明大敦授)

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