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パウル・クレー「森の中に建てられる城」
美の美
これは、一九二六年、いわゆるデッサウ時代、クレーが四十七歳のときの作品である。
バッハのフーガを聞くような気がする、という人もある。たしかに、それだけ典雅な気韻がある。事実、クレーは音楽に通じていたし、クレ―の作品に音楽的なものを感じても不思議はない。あるいは、この作品あたりは、対位法なども考えていたかもしれない。
子供がカードでお城をつくる、その印象と、むかしの人人が、森の中に城をつくってゆくイメージとが、モンタージュのようにではなく、もっと密接に、不可分に結びついてりいるようでもあり……もっと、よく見ると、古代の宗教的感情さえ感じられるようでもあり。
「ようでもありーー」をくりかえしたが、いわば、これが「発見された真実」というものだからである。
描写的に城や森をかくより、このように分割され、再構成された構築の方が、真実なのだろうし、この真実は、すでに発想のときに無意識ながら発見されていたのだ。クレーの作品が、みかけはアイマイだが、実は、明晰(めいせき)さを最初に感じるのは、そのためでもあろう。
(美術評論家・明大教授)
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