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パウル・クレー「建物」

美の美

 ピカソが二十世紀前半の芸術の激動的なダイナモだとすれば、クレーは、ある意味で、その正反対の位置にあって、静かに、徐々に、人人に力と養分を与えているように思われる。この作品は一九二三年、四十四歳のとき、いわゆるワイマール時代の作品。 このころは建築物や、それに類したものをかなり描いている。
 ステンドグラスのように、光が絵の向こう側から、こちらにしみ通ってくるような印象を与える。 黄から紫へと、色面が移行し、見るものを夢幻に誘う。いわば、幼少のころ聞いたり空想した風景、そして、心のどこかに長いことしまい忘れてしまっている風景のようでもある。
 北欧的な冥想(めいそう)の一典型かもしれない。
 「アイマイモコとし、ものの背後に、窮極的神秘があり、知性の光はあわれにも消えてしまう」とクレー自身はいうが、実はこの作品はむしろ、はなはだ明晰(めいせき)であるーー画家の考えついたことばを裏切って、明晰である。そのへんが芸術作品の重要な意義であろう。
(美術評論家・明大教授)

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