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パウル・クレー「ハイウェイと横道」

美の美

 クレーは一九二八年十二月から翌年の一月にかけて、エジプトに旅している。
クレーはそれ以前からエジプトにあこがれをもっていたが、それは、ある人によれば、ゲーテがイタリアにあこがれていたのにちかいという。たしかに、近代の北欧人として、熱帯の古代オリエントの世界にあこがれたのは、単なるエキゾティシズムではない。近代文明の転換を身にしみて感じるものの、必然であった。
 だから、クレーがエジプトで吸収したものは、表面の現象ではなく、原初的な、根源的な、大地の生命力みたいなものだった。これは、その後のグレーの作品にじゅうぶんにあらわれてくるが、一九二九年作の「ハイウェイと道」は、その最初の記念すべき作品である。
 横にひろがる、さまざまな幅のシマが、垂直や斜線で切られるーーこの横ジマにちかい構成が直接エジプトの壁画やビラミッドの石積みや風景からきたものであるかどうかはわからない。
 むしろ、地平線まで重なってゆく無限感は、北方の太古の海に面したように、深い孤独感があるともいえよう。 クレーの求めたものは、太古から変わらぬ大地の生命力への信念だったかもしれない。
(明大教授・美術評論家)

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