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バスモア「内海」

美の美

 ヴィクター・パスモア (1九〇八年―)のこの作品(一九五〇年作)は、ほとんどまったくの抽象絵画といってよかろう。渦巻状の線、原色の対比で、きわめてあざやかに画面を構成している。
 が、これ以前は、おだやかな具象的な風景画が多い。「鳥がうたうように絵をかく」といわれるが、ボナールやウィッスラーのようなフンイキのある叙情的な風景で、トーンを大切にしていた。 ウィッスラーといえば、霧にけむるテムズ河岸なども彼の好む主題で、中には初期のナッシュのように繊細な神経の感じられる風景画もある。
 どうしたわけか、この作品のころから急に抽象絵画に転じ、トーンを打ちやぶるかのように原色を対比させ、動的な構成をとる。
 その後リリーフのようなものまでつくり、日本の国際展にも、そうした作品が紹介されたことがあるので記憶する読者もあろう。ともかくも、この作品は彼の生涯の画歴で一つの重要なものを示すものだろう。
(明大教授・美術評論家)

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