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ニコルソン「水さし」
美の美
ニコルソン(一八九四年―)は現在イギリス国境で抽象的傾向の代表的な画家とされているということは同時に、より新しい年代層からすでに批判の対象にされていることをも意味する。幾何学的とか静的とかいわれる画風は清潔だが、若い年代にとっては端正すぎるのだろう。
この作品はもっとも初期の作で、まだ抽象的傾向に意識的にはむかっていない。なんの変哲もない水さしが一見さりげなく描かれているだけだが、繊細な感覚で、清潔なマチエールを示し、忍な構成にはつつしみ深い孤独な情感と内攻的に緊張した若々しい筋が通っている。多くの時間と労力をついやした作品だとみずからいっているが、たしかに、青年特有の抒情的な神経のち密さで、懸命にとりくんだ様子はうかがわれる。ここではまだ自分の「造型言語」を明確に発見しているとはいえぬが、後年の特徴は予想される。
(明大助教授・美術評論家)
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