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ニコルソン「作品」

美の美

 ニコルソン自身のことばによれば、この作品は彼の画歴において記念すべきものだという。一九三年作、このころから彼の抽象様式が始まってくる。あるとき町を歩いていて、ふとみたウインドー。 店内にあるものガラスの向こう側にあるものと、自分の背後にある町の風景と、その中間にいる自分とが一枚のガラスの面同時に映っていて、どれが現実のものであり、どれが影であるのか、区別できぬ夢のような心持ちになった。そのときのイメージにもとづいて制作したのがこの作品だという。 これだけならば、たいした問題ではない―そうしたいろいろの事物の諸関係を一枚のガラスという平面に翻訳したにすぎぬとすれば。が、目の前に実際にひろがる空間とその中にばらまかれた事物、目に見えぬ背後の空間、自分では決して客体化することのできぬ主体―、そうした問題が、こののち現代の造型上の空間関係としてしだいに明確になり、その追求がきびしく、しかも清潔に行なわれることになった。たしかに、彼の画歴で、記念すべき作品であろう。
(明大教授・美術評論家)

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