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ニコルソン「レリーフ」
美の美
ニコルソンはイギリスでもっとも抽象的な傾向を追求している人だが、ときどき具象的なイメージにかえることがある。というより、いつも、実際は、具体的なものから抽象化していくように思われる。 ニコルソンの絵はだを見ていると、おのずとコンオール地方の風景を思いおこすという人もある。
ニコルソンは若いころ、ある町でショーウインドーをのぞいたところ、中のものと、ガラスに写った自分の背後の空間と、その中間にいる自分とが一緒になっていて、どちらが実際のものどちらが写ったものか分らなくなったが、そこから自分の抽象絵画のいろいろの画が出てきたと自身で説明しているが、むろん、これだけのことなら、ガラスにうつったさまざま画を再現描写したにすぎない。
しかし、目に見えぬ周囲の空間の中におかれた自己の状況ということが、生活空間の意識にまで拡充され、やがて、独特な抽象画を産みだすことになる。
このレリーフも黄金分割をしたり、対象線をひいてみたりすると、きわだって整然と計算されているのが分るはずだが、それよりも、その質感に具象的なイメージ、あるいはムードが感じられる。
(美術評論家・明大助教授)
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