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ナッシュ「柱と月」
美の美
ボール・ナッシュ(一八八九ー一九四六年)は若いころ、第一次大戦に参加し、はじめは軍人として、のちには従軍画家として西部戦線で働いた。負傷しガスにやられ、それがもとで病身になるがそんな経験が彼の画歴に決定的なものをもたらすことになる。
爆撃された大地や砲撃でさんたんたる姿になった樹木や沼なども描いている。
その後彼の描く多くの風景には現実的なイメージがあるが、それは彼にとっては幻想でもなく、神秘でもなく、まさし現実だったのである。
超現実の「超」は超スピードの「超」と同じく、もっとも現実的なものという意味だ、という言い方がある。それはともかく、この夢幻的な風景も、彼にはひと皮むいた現実である。 冷たい、青白い月と、石柱のいただきの球とが相似形として対応しているのかもしれぬが、そんなことよりも、この石のように蒼白(そうはく)な月に照らされた並木のすざまじい姿は、荒涼として、太古にかえったかのような風景である。
(明大教授・美術評論家)
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