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ターナー「海から見たピアツェッタ」

美の美

 ターナーは十九世紀はじめのイギリスで活躍した風景画家だが、半世紀後の印象派以後を予想させる異才である。光と色とが不思議にとけあって美しい。この作品にもその辺がうかがえる。
 ターナーは一八一九年にはじめてベネチアをたずね、そのとき多くのスケッチをしたが、油彩の「ベネチア風景」がはじめて展示されたのは一八三三年であった。その後二度短期間ベネチアに旅行したが、以後四八年まで、たえずベネチア風景を展示しつづけた。全く展示されずにアトリエに残された絵も多く、それは死後美術館に遺贈されることになった。この作品もその一つ。
 こうした作品の多くはよごれたまま長年しまいこまれていたが、この作品は一九五五年になって、洗われ展示されることになった。当時としてはスケッチである。現在ではそのまま一つの作品であろう。 主題は色と光との織りなす、一種の交響曲の序章にすぎない。右手の総督宮の上にかっ色の筆のあとがあって、「描写」とはなんの関係もないが、これがあってバランスがとれていることはたのしい。
(美術評論家・明大教授)

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