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ターナー「吹雪」
美の美
ターナーは異常な名声欲と異様な韜晦(とうかい)癖とをもつ画家だったが、作品においても、なみなみならぬ実験をしている。
この作品の主題は港の沖合でふぶきにまき込まれた舟の情景だが主題はもはや問題ではあるまい。光と色と形態のドラマがある。いまではたいして大胆とも思えぬが、当時とすれば一つの突破口をひらいたことになる。もうひとおししたら、いわゆる抽象絵画になりそうな作品である(抽象・具象という最近の分類の仕方について、ぼくは大きな疑問をもっているが、それはここではふれない。ともかくも抽象絵画になりそうで、ならない作品にちがいない)。が、最近、ターナーを抽象絵画の先駆者の一人として見ようとする見方があるようだが、そういう点から見るとすると、案外浅薄に見えてくる。それ以上に、彼は絵がそれ自体として独立し、自足して力を持つと信じていたにちがいないし、光と色の効果以上のものを考えていたにちがいない。
(美術評論家・明大教授)
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