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スペンサー「荒野のクリスト」

美の美

いつかの国際展に出品されたスペンサーの、いわゆる魔術的リアリズムに近い、一種細密描写風の画面には、幻想的なものと同時に、土のにおいをかぐような、土俗的なひなびたおもしろさを感じた。
スタンレー・スペンサー(一八九二年―)はパークシャーの一村に生まれ、生涯のほとんどをここですごしている。若いころロンドンに勉学したときと、第一次大戦で大陸に従軍したほかは、故郷をあまり出ないようだ。
自分の情感と視覚とをやしなった生れ故郷の風土やその中のいろいろの事象に親しみ、執着する一方、素朴に聖書を愛読し、聖響中の出来事を想像する。聖響中の物語を多くかいているのだが、それが、いつも故郷の風土と事物
に密着してあらわれてくる。
この絵など、東洋画に近いようにさえ思われるが、たぶん近世ヨーロッパの合理主義が見おとしていた、プリミテプな生命力の現れかもしれぬ庶民的な質朴さの一つの典型といえようか。
(美術評論家・明大助教授)

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