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ジャコメッティ「指さす男」
美の美
ジャコメッティ(一九〇一―)の彫刻は、これ以上は痩(や)せられぬというまで痩せてしまった、ひょろ長い人体とその人体をかこむかのような無限の空間との対置で構成される。人体は基本線だけで、わずかにポツポツした凹凸のほかは、ほとんど肉付けがない。 いわば極限状況におかれて、人間が無限小の点となったとき、この一点をふっきれるかどうか試みているかのようだ。 この一点を存在させるために彫刻自体が、ぼくたちの日常的な空間とは不連続の空間をつくり出さねばならない。 この彫像が指さしているのは無限のかなただが、この場合の無限の距離とは、日常の空間とはふっきれた、いわば彫像自体が形成している「場」なのである。
つまり、彫刻が存在しうるためには、それがおかれる「場」を彫刻自体がつくり出さねばならぬという言語撞着するようなことを、実行しようとしている。
これは現代の造形空間についての、一つの大きな問題の提起である。
(美術評論家・明大助教授)
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