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ジォット「キリストの死」
美の美
ジォットは同時代人のダンテも「神曲」で激賞しているくらいで、生前から大きな名声をもっていた。その名声は今日にいたっても、たもちつづけている。こういう例はいまではそう珍しくないように思われがちだが、実際は案外まれなどとだ。ジォットはその最初の画家である。
ジォットの作品にまずぼく(たち)がうたれるのはその公正な厳格さとでもいうべきものだが、そのために多くの実験がなされている。
この作品はバドバのアレナ礼拝堂の壁画の一つ。大きな絵にちがいないとぼくたちはすぐ感じるが、それはこの絵の実際の大きさとは関係がない。いわば作者の精神の大きさと公正であり、画面からいえば、空間処理における人物のすがたの大きさである。人物は力強い単純なかたちにおかれ、細部は省略されている。岩のように堅固だが、しかも人間感情にみちていて、キリストの死をいたむ使徒たちの悲しみに共感し、ぼくたち自身がこの絵の場景の一部分になる。 ぼくたちはこのドラマに参加することになるわけだ(そして、おもしろいととに、この絵は演劇の舞台のようでもある)。
(美術評論家・明大教授)
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