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サムエル・パーマー「丘のある風景」

美の美

 サムエル・パーマー (一八〇五―八一年)はイギリスのロマンティシズムの中で、一種独特な位置をしめる画家である。
 ウイリアム・ブレークは晩年、数人の若い人々と親密な感情で結ばれていたが、この人々は当時の擬古典主義を否定して、ブリミティブなものに生命感を求めていた。 バーマーはその一人。
 彼は病弱で、ほとんど飛行したことがなく、戸外生活すら知らなかったといわれるが、ブレークとの出会いはこの神経敏感な青年には異常なショックだったようだ。 ことに田風景に強い興奮を与えた。
 一八二六年から七年間、病いのため、ケントのショーハムという僻村(へきそん)にとじこもり、そこの風景を水彩あるいはテンペラで描いたが、これはその一つ。彼の生を通じて、もっともいい時期のものである。
 彼は目の前にある現実の風景を描くのだが、それが現実の風物か、それとも太古の幻覚であるのか、彼自身わからなくなるらしい…・などといわれたが、狂人ではないから、そんな混乱はないが、当時はそれほど異様にみえたのだろう。
 幻想的で、精密な観察は、のちの魔術的リアリズムにも通じるし、思いがけぬ近代的な意味をもってくるようにも思える。がこの作品をささえているものは、若さのもつ清潔な緊張感であろう。
(明大数授・美術評論家)

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