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サザランド「磔刑」
美の美
グレアム・サザランド(一九〇三)はその国歴のはじめから近代絵画の二つの大きな課題にぶつかっている。一つは、いわゆる深い奥底の幻覚、あるいは、無意識の領域と結びついた不安の探究。いま一つは、絵画という二次元のワクの中に無限定な空間を構成するシステムの追求である。
いままで名称と位置を与えることによって、人間が限定していた事物が、名称をこえ、位置をはずして、人間の規制し得ぬ事物としてあらわれたのか、それとも、人間は事物から名称をはぎとり、その位置から「追放」したのか、たぶん両方だろう。サザランドはいままで名もつけられずに受動的におかれていた石ころ、木々、虫などを、あえて不安定な状態にもちこみ、無意識をゆさぶりおこす。
こんな経歴ののち、第二次大戦を通り、グリューネワルトの「礫刑」(たくけい)に傾倒して、この作品が生まれる。 近世の克服という一大動向の中で大きな意味をもつ作品であろう。
(美術評論家・明大助教授)
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