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ゴッホ「星月夜」(部分)

美の美

 有名な「星月夜」は、見るものに神秘的な、宗教的な深みを感じさせる。いわば、激しい動きが、そのまま悲劇的清澄にまで昇華された、透明な、壮大な宇宙感覚である。 宇宙の中にただひとりいる孤独感。と同時に、自分の生命が無限に拡充されて、ついに宇宙の創造力と合体する感情……とでもいっておこうか?ゴッホの求めたものは「孤独者の社会運帯」だった。
 「星月夜」の星はそれぞれ孤独でありながら―あるいはそのゆえにー孤独のまま、たがいに連帯関係をたもちつつ、壮大に動いている。星は宇宙そのものの力以外なんの支えもなくて、その軌道とあやまらぬように、ゴッホの激しい情熱と意志もその方向を決してあやまらぬ。 それを支えているものの一つは、この筆触であろう。
ぼくたちの日常の視覚でとらえうるかたちの中にはおさまり切れぬもの―いわば、物の諸関係―が、こんな筆触として表現されてくる。ここで、あえて部分を出したのは、そのためである。
(美術評論家・明大助教授)

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