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ゲインズボロ「画家の娘たち」
美の美
仲のよい姉妹(記録によると四歳違いという)が、ごく自然によりそって愛撫(あいぶ)している作品―なかばスケッチで、未完成である。右にネコが線描されていて、原名では「猫にたわむれる画家の娘たち」と題されているが、題はどうでもよろしい。
テーマは十八世紀の、そして、それ以後しばらくの間の、肖像画の、はなはだ通俗的なものになる。 が、 この作品は決して通俗ではない。
ゲインズボロ (一七二七ー八八年)は十八世紀イギリス肖像画を代表する画家だし、当時からたいへんもてはやされてはいたが、「肖像画にはうんざりした。 ヴィオラ・ダ・ガンバをもってどこか美しい村に行ってしまい、風景を描いて静かに落ちついて余生を送りたい」と、本気でいっている。
家庭を大切にしていたようなふしもうかがえる。 流行社交界では肖像画家としてつきあっていたが、その半面―というより、そのよりどころとして、孤独に風景画を描いているし、家庭を大事にしていた。
娘に対する愛情がーある意味では、はなはだエゴイスティックな愛情がー社交界の人々の肖像を描くときの通俗さを破っている。
この作品の背景の空は、故郷のサフォークの空のビジョンだともいわれるが、彼の多くの風景画の空と同じように、光と影のいりまじった暗いかがやきをもっている。
(明大教授・美術評論家)
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