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グリューネワルト「磔刑」
美の美
イギリスの現代画家の中で、ぼくの好きな作家として、サザランドの作品をこの欄でもいくつか紹介した。彼が「刑」や「いばら」の連作をする直接のきっかけは、北方ルネサンスを代表するイーゼンハイム祭壇画―つまり、グリューネルトの「磔刑」を見てうけた感動だったという。
北方ルネサンスを代表する、もう一人の画家デューラーにくらべ、グリューネワルトの伝記は、ほとんど全くわかっていないが、この作品を見るだけで作者の偉大さがわかる。
サザランドのキリストは死後もうかなりたっていて、すっかり冷え切っているが、このキリストは死んだばかりで、傷はなまなましく、まだ、からだのあたたかみが残っている。目をおおいたくなるような残虐さがある。
おそらく、この辺にキリスト教あるいはキリストまたはキリストの死ということに関する十六世紀と二十世紀との観念の相違があるかもしれない。
ともかくも、これほど、なまなましい残酷と、宗教的な敬虔(けいけん)とが、また、生身の人間のいたましさと、神に通じる至福とが結合している作品はまれである。
(美術評論家・明大教授)
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