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クレー「幻想陶器」(一九二五年)
美の美
―クレーという人は精神異常か精薄だったのではありませんか?―あるとき、あるひとがぼくにこう尋ねた。また、あるとき、別のひとはこういったークレーは小児病だったのではないですか?そのひとたちが両方とも一応画家なのだから、ぼくは閉口した。
―なんでも、普通の人の脳細胞は無数といっていいほどあるそうです。そして、働いているのはその何分の一か何百分の一で、あとはほとんど眠っているということだ。たぶん、クレーの場合は、普通ならば眠っているはずの細胞が、いくらか働いているのでしょうーまことに散文的な、こんな答えをするよりしかたがない。答えにならぬことは百も承知である。
子供の絵と精薄者の絵とでは、またちがいがあるが、いずれにせよ、絵画を作品として全体的に統合するメドとしてのデッサンがない。言いかえれば、事物を存者たらしめることによって、作者が存在者たりうるかもしれぬ、その接合点を求める意思がない。それが本格的な作品との根本的な相違である。クレーのこの作品の無気味さは、人間の手に負えぬ外界の事物を、そのものとして存在者たらしめているところにあろう。
(明大教授・美術評論家)
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