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クレー「作品」

美の美

 クレーには文字をテーマにした作品がかなり多い。この作品もアルファベットを主にしたパターンを横に並べ、そのしまを重層させ、その間にさまざまな色を用いている。一種のアラベスクである。まるで子供の絵のようだというひともある。もちろん、そのように見て楽しんでもよかろう。ある意味では、だれかもいったように、創造的な仕事をするときには頭脳は満二歳くらいの状態にあるともいえるからだ。
 と同時に、クレーは二十世紀において、透視図法と色近法とを本格的に身につけていた、ごく少数の画家の一人なのだということもぼくは強調したい。だからこそ、透視図法と色遠近法との近代絵画における意義を実証しているのである。別のことばでいえば、レオナルド・ダ・ビンチにとって、透視図法と色遠近法とは、自分の身をかけて、終生追求すべき到達不可能な問題だった。レオナルドのほとんどすべての作品は未完成だったし、まさにその点に、事物の存在と作者の存在との結びつきがありえたのだ。
 クレーもそれとほとんど同態度で絵画に向かっている。むろん、クレーは見るものに、そんなむずかしい問題の追求を要求してはいない。まねかれて、作品を前にすれば、その人なりに楽しめばそれでじゅうぶんである。
(明大教授・美術評論家)

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