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クレー「とりこ」

美の美

 この絵は子供の絵とどこがちがうのかと先日いきなり聞かれ、ちよっと返事に窮した。いわく言いがたしなどとヤニ下がるつもりはないし、また、答えるすべを失ったわけでもないが、いきなりこういう問いをかけてくる人に、とっさに短い言葉で答えるわけにもいくまい。 児童画とのちがいをいうためには、大きな前提からときはじめねばならぬからだ。が、それはともかくーー
 たしかに、一見、子供が空想のままに、たのしく描いた童画のようである(子供の空想――それは空想なのか現実なのか、ここでは問わぬとして)。が、これは子供に描ける絵ではない。しいて童心ということをいうならは、人間がその根源のところで共鳴する、いわば魂のひびきをもっとも純粋な状態にたもちつつ、作品に結晶させるために、人知れぬ複雑な手だてをふみ、大きな努力をはらっている。 その手だてをおもてだって見せぬ強さが魂のひびきを開放するのである。
(美術評論家・明大助教授)

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