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「増長天邪鬼「(東大寺戒壇院)

美の美

 東大寺戒壇院の、がらんとした建物に入ると、壇上四隅に、塑像の四天王が立っている。この四天王は、後に他の堂からここにうつされたものといわれるが、天平彫刻の一つの代表作にはちがいない。
仏法護持の荒ぶる王たちだが、後世によく見うけられるような、大げさな身ぶりや表情を、あまりあらわにせず、かえって、緊密な、充実した力強さがある。その力をこちらがうけとめつつ、じっくり見ていくと、いつの間にか、ふと足下の邪鬼に目がとまる。
 おもしろいのは、ここで、いままで緊張していた力がすーっとほぐれて、ゆとりのあるユーモアを感じ、心が開放されることだ。
 うまいものだ。四天王の威容から邪鬼のコッケイにうつるはこびなど、こころにくい。
リアリスティックに肉づけされているのだが、ぎゅっとふみつけられたり、ぽんととび出たりする格好は少しもいやみがなく、まるで、いたずらっ子が先生にしかられたような、ほぼえましさがある。いじけたり、わるびれたりするところが少しもない、天平という大きなエネルギーをもった時代は、こんなユーモアで心を開放する術をこころえていた。
(明大助教授・美術評論家)

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