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「ピエタ」(アビニヨン)

美の美

 後期ゴシックといわれる、フランスをはじめアルプス以北の画家で、イタリア・ルネサンスの影響をうけたものは無数にある。精神においても、案外見かけ以上に影響を強くうけたと思われるが、外見的には様式において響が大きかった。
 この「ピエタ」は南仏アビニヨンで発見されたので、この名がある。作者は不詳、しかもこの作者の作品と思われるものはほかには見あたらぬという。作者名が忘れられていることは、この場合、ことに重要だ。だれがつくったかわからなくなるまで、この作品は当時の人々の典型的な思想と感情とをーあるいは、思想、感情とも規定できぬ本質的なものをー表現するつもりでなく表現しているということだ。いわば特定の個人の作品というよりは民衆のつくり出したものだ。
 「ピエタ」とは死後のキリストがマリアに抱かれている像を意味するがキリストの死に対する民衆の深い感動を暗示している。物語を語っているのではなく、また画家の個性を表現しようとするのでもなく、ある常套(じょうとう)的な主題を、だれかの影響下の様式でつくり、しかもこれ以外には見えぬ独自のものをつくっている。
(明大教授・美術評論家)

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